私とあの子の好きな人



【優花side】

フラれたあと。


本当はいけないとわかっていたけど、私は屋上に来ていた。


屋上につながる階段のドアの前で立ち尽くして、二人の話を聞いていた。




......よかったね、七海。

ありがとう、裕也くん。


私は、足音を忍ばせて階下に戻った。



ぽろぽろと流れる涙を、止めることなく。


泣く時なんて、辛いだけだと思っていたのに。

なんだかスッキリしている。





それでも、涙は止まることなく溢れて。



「......井上?」

「っ.........」


急に名前を呼ばれて顔を上げると、階段下から氷室くんがこっちを見ていた。


「...っ!?泣いて、る?」

「あ...」


気づかれたと思った時、急いで涙をぬぐって。

「......あはは、見られちゃった」

「...なんかあったの?」


優しく声をかけられることが、胸に響いて。

「なん、でもな...い」

「......泣いてるのに?」



「............っ...」




「......フラれ、ちゃったの」

「っ...」



「好きだって、気づいた、とき...には、もうダメ、だっ、た。わかって...たけど」


ひゃっくりが溢れてきて、なかなか言葉にならない。


「っ、」

「......井上」


ふわ、と頭に暖かいものが触れた。

頭を撫でられているのだと気づいたとき、涙が溢れてきた。


「...泣いていいよ」

「...っ、う、っ............ぅぅ...............」


優しい氷室くんの声に、また涙が溢れてきた。

きっと、もう止まらない。

























しばらく泣き続けたあと。

「ごめんなさい。氷室くん、びっくりしたでしょ」

「ううん。.........それより...」
「?」



言いにくそうに視線を泳がせる彼。

ひとつ深呼吸すると、まっすぐに私の目を見た。


「.........優花」

「っ、」

急に名前で呼ばれて驚く。


「俺じゃ...ダメですか」

「.........なに、が?」


「...彼は、君を見てなかったけど、俺は、君を見てる」

「...え?」



まっすぐに見つめてくるその目が、熱い。



「......好きです」

「っ!?」



「ごめん、でも......考えておいて」

「........................」




新しい恋、始まるのかもしれません。