【七海side】
結局、昨日は裕也に何も言えなかった。
言えなかったんだから、裕也はもちろん普通な顔してくるだろうワケで。
「.........会いづらい...」
私だけこんな落ち込んでるとか、そういうのも嫌だから、もう、仕方ない。
「優花に聞いてもらおぅー」
と、そのとき、目の前に見知った後ろ姿。長くて綺麗な黒髪。
「!優花......」
大好きな親友の後ろ姿を見つけて、駆け寄ろうとしたとき。
「...ぇ.........?」
彼女に近づく、一人の男子。
その後ろ姿も、知っている。
だって、その姿は。
「裕也.........?」
大好きな、私の好きな人。
二人はとても楽しそうに話していて。
どうしてか、優花の横顔はとても嬉しそうで、まるで...。
「好きみたいじゃない...」
恋人。こいびと。
その言葉がぴったりだと思った。
「優花...ねぇ、もしかして」
好きなの?
その日の昼休み。
いつもなら裕也や優花とお弁当を食べるのだけど、体調が悪いからと逃げてきてしまった。
けれど本当はどこも悪くないから、保健室に行くのもためらわれて、今は一人で屋上。
今日はずっと優花を避けてしまった。
ホームルーム後で話しかけようと思っても、今朝の二人の背中がちらつく。
心配した優花が話しかけてくれても、うまく言葉が返せなかった。
「......こんなんじゃいけないのに...」
屋上の影になっているところで、ひざを抱えて座る。
「裕也にも言えなかったし、もー、どうしたらいいの...?」
「...言えばいいじゃん?」
「うわっ!?」
独り言に返事が返ってきて、驚いて顔を上げると、見知った顔が覗き込んでいた。
「...氷室君じゃん」
「うん。真斗でいいよ」
「...何やってんの、こんなとこで」
「いや、こっちのセリフだよね」
’’女の子が’’っていいながら隣に座った彼は、校内で知らない人がいないくらいの有名人。
まぁ、ここまで整った顔してたらね。
ちら、と見た横顔は少し冷たいような気もするけれど、やっぱり綺麗だと思う。
そのくせ浮いた話聞かないし?
真斗君は私に構わず持っていたカフェオレにストローをさして飲み始めた。
だから少しだけ愚痴ってみようかと思った。
「......告白できなかったの」
「ふぅん」
「...花火大会の日にね、言おうと思ったんだけどさ」
「言えなかったわけ」
「...うん」
「へぇ」
彼は相槌を打ちながらも静かに話を聞いてくれる。
「...それにプラスして友達がそいつのこと好きかもだし」
「!!?、ゴホッ、ケホッ!」
「............?真斗君?」
「......、その友達って...井上のこと?」
「え、うん」
「...............そう」
............ん?
.........これはもしかして。
この反応は。
「真斗君、もしかして、なんだけどさ」
「?」
「優花のこと好きなの?」
「っ!!!?な、っ、えっ?、」
あぁ、そうなんだ。
っていうかわかり易すぎでしょ。
「え、なんで?ねぇねぇ、なんで?」
「うっせぇよ...」
「いやいやいや。校内1のイケメンが親友のこと好きとか、気になるに決まってんじゃん!」
はぁ、とため息をついた真斗君は、それでも話してくれるみたいで。
「...あいつさ、図書室によく来んの、知ってる?」
「うん。もちろん」
「俺もよく行くんだけどさ...あいつ、一人で仕事こなしてるときが多いんだよ」
そうなのか。
図書委員だってことは知ってるけど。
「んでそのとき、高いところとかに本、戻そうとすんだけどさ...ちっちゃいから届いてないんだよ」
「あぁ、ね」
想像つくわ。
「...そのとき、危ないな、心配だなって見てたら、いつの間にか目で追ってて...」
’’気づいたら好きになってた’’。
って、彼はそう言った。
「へぇ。好きになるのも、いろんなきっかけがあるんだねぇ」
「...そんなもんだろな」

