【優花side】

「もう!だから、さっきから言ってるじゃん!!」
「だーかーらー!俺は知らないっつってんの!」

昼休み、図書室に行くために廊下に出ると、そんな喧嘩が聞こえてきた。

.........また七海と裕也君か...。

佐山 七海は色素の薄いショートカットの美少女。

七海を振り返る男子生徒が少なくないことくらい、私でも知ってる。

あの子は私の親友で、とても仲がいい。


その隣にいるのは、夏見 裕也。

お調子者で、クラスのムードメーカー。

二人は幼なじみで、よく喧嘩はしているのだけれど...。

「なによ!どうせ何も考えてないんでしょ!」
「はぁ!?俺は考えて行動してるだろ!」
「してないよ!いっつもいっつも!!」

......今回は少し複雑みたいだなぁ。

止めに入った方がいいかなと思ったけれど、二人とも周りが見えてないみたい。

本当、似た者同士だよね。

こういう場面を見る度、お似合いだなぁと思う。


......喧嘩してなければもっといいけど。


まぁ、いつもほっとけばいつの間にか仲直りしているから、いいか。

結局、ほっといて図書室に直行。

振り返って歩いている時にも、喧嘩の声はずっと聞こえていた。