【優花side】

約束通り、七海にヘアアレンジを施してから家に帰ってきた。

今日は、花火大会。

.........今頃、七海と裕也君は会場にいるのか。

2人で並んで、歩いて。

部屋に戻りベッドに座って、壁に寄りかかる。

浴衣姿の七海、可愛かったな。

............うまくいく、かな。


ズキン。

胸が、締まる。

.........痛いなぁ。

胸が、痛い。

2人が一緒にいる、って考えるだけで、痛くなる。

............え?

......今、なんて?

............だって、それって。

「わたし......裕也...君...すき、なの??」

裕也が。

好き?

頭に浮かぶ、彼の笑顔。

思い出した瞬間、赤くなる頬。

それだけで、この想いを確認するのには十分で。


気付いた時には、家を飛び出していた。

お願い、待って。

息を切らしながら走って、屋台に着く。

裕也君は、どこ...?

七海は?

キョロキョロと見回して、見つけた後ろ姿。

「ゆ......」

声をかけようとして、止まる。

伸ばした手が、足が、身体が、時間が。

ラフな格好をした裕也が笑顔を向ける先には、同じく笑顔の、美少女。

その姿は、仲良しな恋人そのもので。

............あぁ。

遅かった。


そっと、彼に伸ばした腕を降ろす。

そのまま、振り返って、二人とは逆に歩き出す。

逆の方向。

花火大会の、会場とは真逆に。