『検査薬パクって捕まるとか、かっこいいーじゃん』

ナンバー1が、目の前で新しいドレスをまとった自分の姿に自惚れている。

『アリサちゃん、お客様来てるよ』
ボーイがドアから顔を出し、この女を引っ張ってくれた。

紫色のドレスをなびかせてロッカールームを後にするその姿は、まるで泥にまみれた蝶のようだ。
あたしもきっとそうだ。

客が可愛いと褒め称えるこの顔もきっと泥まみれに違いない。
そしてこの業界の女のアタマの中は尋常ではない。

人の美しい羽を羨ましがっては、平気な顔で泥を塗りたくる。灰色に染まる鳩の羽のように上手くしたてる。

どこにも居場所のないこの私に名前をつけるとしたら、きっと神様は
鳩羽の独人とつけてくれる。