私の周りの若い人達は、日々、何やらあるらしい。

先日、目の前で大粒の涙を流した前島さんは、二週間後の月曜日には、いつも通りの笑顔に戻っていた。
しかも、珍しく薄化粧で…。

「へぇー…」
「何ですか⁈ どうかしました⁈ 」
目をパチクリとさせている。
「いやいや、何だかいつもと雰囲気違うなと思ってね」
私がまじまじと顔を見るもんだから照れておる。
「前島さんって、アイメイクしないと幼く見えますね」
「その方が似合いますよ」
藤堂君や玉野さんの言う通り。
飾った所で、自分が変わる訳ではない。
「うん…確かにミオちゃんらしい」
その言葉に気を良くしたようだ。
「そうですか⁈じゃあ暫くこのままでいようかな…」
笑っていた。
素顔が出せるようになったという事は、それだけ本音が出せるようになったという事だ。

「前島さん、彼氏とは仲直りしたのかね?」
無粋な一言に、彼女は黙って微笑んだ。
世直しならぬ仲直しに、私の話が役に立っていればいいのだが…。

……そしてもう一組。
こっちは何だか、妙に雰囲気がギクシャクしている。

「…君達、何かあったのかね?」
鎌をかけてみた。
「な、何もないですよ!…ねっ⁉︎ 玉野さん!」
「え…ええ、何も。西村さんの思い過ごしじゃないですか?」
成る程。目配せですか。
「ふうん…思い過ごしね…」
この “ ご老公 ” の目を欺こうとは、十年早いわ。

その後、二人の秘め事はすぐに露見した。
「ほぉー。藤堂君、今日の弁当は美味しそうだねぇ」
明らかに手作りのおかずばかり入っておる。しかも詰め方がとても綺麗だ。
(これは、明らかに女性の手作りだな。さては、こっちと同じか…?)
ちらっ…
無言で少し先の方を見た。
(ふむ。やはりな…)

「若いって言うのは、いいもんだね」
機嫌良く言うと、不思議がられた。
命短き、恋せよ乙女…ならぬ、若人だ。