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凍えるような寒さも来月でもうすぐ収まってくると人気のお天気お姉さんがテレビから教えてくれた。


こんな寒い季節なのに、来月末にはもうどこかで桜が咲き始めるらしい。




「ねぇねぇ、未月」


「なにー?」


私の前に頬杖をつきながら愛奈が言った。



「来週バレンタインだよ!
未月、今年こそは晴ちゃんにあげるんでしょ?」


一瞬、ドキンっと跳ねる心臓。




今年こそ…………。



晴ちゃんと二人で通い出して片想いをしてから迎えた一度目のバレンタインデーは、どうしても恥ずかしくてチョコは渡せなかった。


それに、いつも二人でいるときにそんな空気になることもなく、だからいきなり渡しても引かれるんじゃないかという不安もあったからだ。


「うーん…。渡したいけどさぁ」

「けど、なに?」


「それって…………
好きって告白する…ってことだよね?」


すると愛奈は深い深いため息をつく。


「なにをそんな当たり前のことを!!
渡すの!告白するの!わかった?!」



「わわかった、わかったから!
声大きいよぉっ…。」


「それならよし。
じゃあ13日二人で作ろうね」

「う、うん…」



チョコを渡すとか渡さないとか、正直どうでもいい。


ただ、その行為が"告白"を意味するんだと考えただけでもうすでに心臓は破裂寸前だった。





────── そして、13日

バレンタイン前日。




「よーし!作るぞぉー!」


昨日、何を作るか二人で決めて買い物も行ったし、準備万端だ。



「あれ?未月、箱多くない?」


リビングの机の上にに並べられたのは大量の板チョコと4つの箱。


「あ、うん。
去年結局渡せなかったし、今年は晴ちゃんと…義理チョコをパパと莉一と泉に渡そうかなって。」

「そっか!
私は本命チョコ、莉一くんにだけ~!」


そう言う愛奈の表情は乙女そのもの。


「いよいよ愛奈も告白かぁ…」

「って言っても今までも莉一くんに渡してたけどね。
でも…今年はちゃんと本命だってこと伝えるんだ」


もう10年片想いしてるからこそ、今伝える"好き"という言葉の重みはきっと他とは違う。


「もし…ダメだったら、もう会ってくれなくなったりするのかなぁ…」

板チョコを包丁で刻んでいた愛奈が小さな声で呟いた。


「そんなことないよ!
愛奈は私の家族みたいな存在なんだよ?
もちろん、莉一も泉も。
今までもイベント事にいつもみんな一緒だったじゃん。

だから…会えなくなることはないし、私もたくさん協力できるんだから!

とりあえず、今はそんなこと考えずにおいしいチョコ作ろうよ!ね?」


「…………うん!」


とは言ってみたものの、実際私だって怖い。
晴ちゃんにフラれたら…………晴ちゃんは莉一たちと仲が良いわけでもないし、それこそ避けられたりするのかもしれない。


でも…今を変えたい自分もいる。




だから…