声をかけて入って来た裸足の女性は季節はずれの真っ白なキャミソールワンピースを着ていた。

だがワンピースの背中部分は真っ赤に染まっていた。

「大丈夫ですか。」と駆け寄りながらチェシャ猫の気配が消えたことを確認する。

「たすけて………ぉねがい……たすけ…て…。」

気を失った彼女を背負って、"救護室"へと向かう。

「黒蝶さん。アナです。」

「お入り。」

中に入り出来るだけ紫煙を避けながら奥へと進む。


そこには現代では絶対に見ることのない"花魁"が煙管をふかしながら悠々と座っている。


目の前の花魁、黒蝶さんは江戸・吉原で1番人気を誇っていた太夫。

彼女は自分の身を自分で守るために、顧客の医者から医術を習ったらしい。