葉月side




3年になってから何となく一緒にいる人ができた

2年の最後の方に転校してきた

神谷 隼人

性格的に気が合うことが多くて

何となく、隣にいたい気がした

気がした!だけだと思うけどね


「3年最初の行事である、体育祭
今年はこの2組が勝つことは決まっている!
ってゆーことで、体育委員は俺が決めさせてもらった」


LHRの時間に我らが担任の田口ことたぐちゃんが声高らかにそんなことを言った

体育主任でもあったたぐちゃんは行事の中でも体育祭だけは力の入れ方が半端ない

ここ、桜中は各学年3組ずつあるから

赤、白、青に分かれて団対抗をする

その中でも組み別得点があり、それでの優勝を目指そうとたぐちゃんは言うのだ

そういえば体育委員も決まってなかった


「そーゆーわけで、女子は満場一致だな、瀬野!」

「…はあ!?
体育委員とか、たぐちゃんの餌食にされるだけじゃん!そんなんやりたく…」


必死な反抗はたぐちゃんのガチな感じの視線により封じられた

そんな、最悪だ

面倒なことだけは避けたいからいつも植物係をしてたのに、そんな1年計画は難なく終了を見せた


「ま、これは本当に満場一致だな」

「少しはなぐさめてよ、絶対やりたくなかった№1の委員会なんだからー」

「期待してるぜ、瀬野体育委員」

「お前、今度潰すから」


神谷の嫌味に耐えながらも男子がマシな人ならまだ希望はあると思いたぐちゃんの次の言葉を待つ


「それでだな、男子は僅差だったが
まあ、これも皆が賛成するだろう…須賀澤 優!」


すがさわゆう?

名前だけじゃわからなかったけど、女子の歓声で気づいた

あれだ、ハンサム王子だ

容姿端麗、勉強できる、運動神経抜群のあのハンサム王子だ!

別に嬉しいとか嬉しくないとか…いや、嬉しいとか思っちゃったりしたりした


「おお、美男腐女だな」

「選ばれなかった僻みはよしなよ、美男美女で悪かったなー」


少し膨れっ面になる隼人をよそに自分は教卓へ向かって歩き出せば先に前にいた須賀澤くんと目が合う

本当に容姿端麗だな

須賀澤くんは自分を見ればウインクをして手を差し出し愛嬌よく小首を傾げる


「よろしくね、瀬野ちゃん」

「よ、よろしく」


瀬野ちゃん…

初めて呼ばれた名前

初めてのちゃん付けに少し新鮮さを感じながら隣にいる須賀澤くんにドキドキしてしまった

その後今日の放課後少し残る話をして終わった

たとたどしく席に戻ればプイッとそっぽを向く隼人を見てよく理解できずに首を傾げながら隼人の肩を掴んでみた


「鼻の下伸ばして嬉しそうだったな」

「そんなことないよ、てか、何でそんなに機嫌悪いわけ?」

「別に、悪くない」


相手の態度に少しイラつきを覚えながらチャイムが鳴った

隼人はすぐさま席を立ち友人のいるであろう3組へ向かうのがわかった

隼人の背中を見ながら本当に相手の行動や態度に理解できずにいた自分は戸惑いしかなくて

隼人を追いかけることはしなかった