いつのようにクラブチームに所属してた俺らは毎日一緒に帰ってた

サッカーをする隼人と野球をする俺

スポーツは違えど思うことはいつも一緒でお互いによき理解者でもあった

夕日が落ちるころ隼人を迎えに行こうと教室に向かえば隼人ともう一人の影が見えた

よく見れば俺のクラスの瀬野だった

何の接点があるのかはよくわからないけど、きっと今は駄目だと思ったから俺は教室を後にした

オレンジに輝くグラウンド、今日はどこの部活もオフなのか、そのグラウンドには人っ子1人もいやしなかった

俺はそのグラウンドのど真ん中に大の字で寝転びながらぼんやり夕日に照らされる雲を眺めては目を閉じた

"バコッーーン"

何かボールを蹴る音が聞こえたと思って目を開けば白と黒のあの、あのサッカーボールが飛んできた

よけるのが遅かった俺はものの見事に顔面強打

痛がって顔を抑える俺に近づく足音が1つ

多分、現行犯だと思う


「ひ、人だ!やっぱり当たってたんだ!」


顔面強打された俺にまず一言目がそれ?と俺は思わず体を起こしてそいつを見た

どこかで見たことがあって

さっき見たような気がして

俺はそいつの顔をじっと見ながら思い出せそうで思い出せないその顔を見続ければそいつは目を見開き焦ったように頭を下げた


「ほんとごめん!」


謝罪の一言が飛んできた

その瞬間に気づいたのは

亡くした母親の顔だった

そいつがあまりにも似ていて


「いや、平気…」


ぎこちない返事をすればそいつは明るい顔になりサッカーボールを持ち"ありがとう"と言って俺の前から消えた

あの笑顔の雰囲気、喋り方とか、あの感じが小学3年の時に末期のがんで亡くした母親そっくりだった

その場から動けずにいた俺はどうしようもなく泣きたくなったんだ

3人の妹と弟がいた俺は父親だけの収入だけじゃどうにもならなかった

家賃も払えなくなりそうだからと、今いる祖父母の家に転がり込んだ

家事はほとんど俺がやった

朝、新聞配達をし

兄弟の朝ご飯とお弁当をつくり

帰ってからは飲食店の雑用をして

クラブチームで野球をやる

小学3年の冬からそんな生活をしてた

全部祖父母のつてで働かせてもらってたけど、学校にバレた日には哀れんだ目で教師たちに色々聞かれた

俺はあれからひねくれ者になったかもしれない

そんなときに光を、道をつくってくれたのが

隼人だった

すぐに俺は転校したけど、あいつはよく電話をしてくれて

あいつがアメリカに行くことになってからは連絡が一切取れなくて、家庭事情のこともあり一時期クラスから浮いてる存在になった

それでもいつまでも残るあいつの言葉、

無理すんな

きっとあいつは何も考えずに発した言葉なんだろうけど俺にとっては励ましでもあり、俺にできることをすればいいと言ってもらってるようで嬉しかった

そろそろ終わったと思い教室へ向かえば涙を流すあいつを見て何となく検討がついた

俺は優しくあいつを受け入れる

あいつが俺にしてくれたように

そのあといつもと同じように一緒に帰って

こんな日が続けばいいと思えた日だったと同時に

あの時のサッカーボールを当てた瀬野をどうしても探してしまい、しまいには目で追ってしまう日々が始まった