皐月side




聞いたことがあった

神谷くんに2個下の弟がいたけど事故で亡くなってしまった事

それを聞いたのは本人からだった

転校してきて1週間が経ったある日

葉月とも仲良くなってその経由で私とも話すようになってきたとき

私が日直で葉月を先に帰らせて日誌を自分の机で書いてたら前の席の椅子に座った神谷くんがいた

前向きになってる椅子をこちらを向いて座ってる


「俺さ、実は2個下の弟がいてよ」


彼をじっと見てれば口を開きそんなことをいい始めた

日誌を書いていた手は止まりいつの間にか手の中にあったシャーペンも日誌の上に置いて次の言葉を待った


「親がさ、共働きで2人で過ごす時間がほとんどだったんだ
弟も俺もさお互いがいないと何もできねーよーなほど依存し合ってた」


頬杖をつきながら外を見て話す神谷くんの話が私達姉妹と重なっていた


「ある日、俺が朝起きたら熱が出ててよ、弟が薬買ってくるって言ったんだよ
でもよ、そんときどうしても側を離れてほしくなくてさ
嫌だって言ったんだ
そしたらよ弟はずっと隣にいてくれて、すげー安心した
俺はさ、疲れ果てて寝たんだよ、」


頷きながらも彼がちょくちょく悲しそうになるのがわかった

きっとこの話をするのも辛いと思う

でも、きっとこれは彼が私達に気づいて欲しいことがあるんだと思ったから

黙って彼の言葉を聞いてた


「それが弟が小学1年のときだったな
あいつはさ、俺が寝てる間に薬を買いに行こうとしたんだよな、小学1年のあいつが
急いでたんだ、きっと
薬の入った袋を持ってバイクにはねられた」


下を向いて聞いてた

それでもわかった、彼が涙を流してることを

きっと見て欲しくないんだろうな

顔を上げずにいた私の頭の上に乗る少し暖かい温もりについ顔を上げれば夕日に照らされた涙を流す綺麗な神谷くんの顔がありその瞬間目が合った

はなすことができなかった

あまりにも、彼が美しかったから


「俺があの時、熱をだしてなかったら
あの時、あいつと一緒に行ってれば
あいつに依存し過ぎた俺はさ、何ヶ月も立ち直れなくて学校に行っても魂は家に置きっぱなしみたいな状態になったんだ」


だんだん掠れてきた声を漏らすことなく聞き取りながら、目を見ることをやめた

次の言葉がわかったから


「依存しすぎるな、皐月は皐月だ、葉月とセットじゃなきゃ皐月じゃないことなんてねーんだよ」


神谷くんの言葉が神谷くん自分自身に言ってる気がした

彼をまた見つめてれば不思議と手が伸びて優しく彼の頬を両手で包んで彼の額に優しく口づけた

それはあまりにも自然で無意識だった

だって

あまりにも神谷くんの顔が私が怪我したときの葉月の姿に似てたから