いつも恋して・・・

暗い会場の中から外に出た梨佳子は、日差しの強さに目を細めながら一歩ずつ前へ歩き出す・・・


これからは1人・・・前へ・・・




スピーチの終わった廉は観客席に戻り、梨佳子の席に目をやった。


眩しいライトの中にいて目の前に靄がかかっているよう・・・


『?!』


ハッキリと見えない・・・・


客席の明るさに慣れるまで時間がかかった。


少し目を擦って、


『・・・いない?!』


廉はもう一度目を擦りながら周りを見渡した。


『・・・・?』


キョロキョロしている場合ではないと思いつつも廉は必死で梨佳子の姿を探した=3


「どうかしましたか?」


落ち着かない廉に秘書が尋ねた・・・


「・・・梨佳子がいなくなった=3」


「・・・えっ?!さっきあそこに・・・」


秘書は慌てて梨佳子の席に目をやった。


「・・・・。」


式の途中で席を発ってトイレに行くような梨佳子ではないだけに、空っぽになっている梨佳子の席の理由が想像できない。


2人が辺りを見回している間に就任式はフィナーレを迎え廉はもう一度ステージに上がった。


心ここにあらずの廉は、司会者にマイクを向けられていてもそれなりの返事しかできる余裕がない・・・


目だけは会場内をくまなく探している。


就任式は過去最大のイベントで豪華さ盛大さ・・・諸々余韻を残したまま幕を閉じた。


廉はステージを降りたと同時に梨佳子の携帯電話を鳴らしてみる=3


♪~♪~

「留守番電話サービス・・・」


「チッ# つながらない・・・(-”ー#)」


廉は控え室に移動しながら何度もかけてみた。


♪~♪~


「留守番電話サービス・・・」


「アイツ・・・そこに行った?!」


『会場内で電波が入らない?!』


自分の携帯電話の電波が入るという事は会場内も通じるはず・・・


「何か連絡入ってないの?!」


自分の留守電にすら用件が入っていないのだから答えは分かっていた。


にもかかわらず、伊藤に声を少し荒げて言った。


「いえっ・・・何も・・・」