そのとき、ぱちんと両手を鳴らしてお母さんが立ち上がった。
音符のついた声で笑い、こっそりあたしにウィンクを飛ばしてくる。
精神年齢が若すぎる。
「二宮さん、行きましょ!」
「そうだね。荷物を2階に持っていって片付けもしないと」
「そうだわ~。もう大変!」
あわただしくリビングから出ていったふたりを、呆然と見送る。
葵衣はさっきから負のオーラをまとってる気がするし。
ちょっと……機嫌悪い?
まあ、怒るのも無理はないかもしれないけど。
葵衣も男の子なんだから、やっぱりプライドはあるよね……。
「……紫乃、こっち来て」
「え? う、うん」
静かな声に、ちょっと困惑しつつうなずく。
言われるがまま葵衣のそばまで歩み寄ったら、手を引っ張られてぽすっと抱き寄せられた。

