その子は女の子だと言われても疑わないくらい綺麗な顔をしていたから、
よくほかの男の子にからかわれていた。
その子のことを、あたしはいつも助けてて……
そうだ。
――あたしは幼稚園児の頃から、いつもいじめられっこをかばうような子どもだった。
あのときあたしは……
その子に、なんて呼ばれてたんだっけ。
ふと、思い出した。
葵衣にはじめてキスされたときに、小さな声で呼ばれた名前を。
“紫乃、ちゃん……”
「え……え?」
ちょ、ちょっと待って。
これって、もしかして。
たったいままで忘れていた記憶に、動揺をかくせない。
信じられない気持ちで葵衣を見上げると、
葵衣はちょっと複雑そうな表情で、あたしから目をそらした。
「――あお……?」

