「葵衣? 家、ついたよ?」
いつまで無言なんだろう……。
そう思いながら、スカートのポケットに入れた鍵をさがそうとした。
けれど、ぱっと葵衣にその手首をつかまれる。
「そっち、左手。……俺があけるから待ってて」
「あっ、ありがとう」
静かに言った葵衣に、はっと自分の手を見る。
指は5本とも動くから、ふつうにポケットに入れそうになっちゃった。
これは気をつけないと、うっかり激痛を味わうことになっちゃいそう。
っていうか、やっと話してくれたと思ったら、
鍵をあけるあいだずっと沈黙だし……。
「葵衣……その、気にしないで?」
ドアを開けてくれる葵衣の服のすそを、右手でそっとつかんだ。
葵衣のワイシャツが、あたしの血でよごれちゃってる。
あたしのブラウスの袖もだけど。
「あたしが自分から負傷したものだし、葵衣が気にすることじゃないよ」
「……でも、跡が残るかもしれないって」
「拓海くんが話したの? もう、なんで勝手に言っちゃうかなぁ。
手のひらなんてたぶん目立たないし、たいしたことないよ」

