「……なんだよ。二宮のお姫さまが」
「葵衣を傷つけようとしたこと、絶対ゆるさないから」
相手をにらみつけ、チャッ、とナイフの向きを持ち替える。
真剣なあたしの声に、銀髪の人が目を見張った。
……そのままあたしは勢いよく、銀髪の人の顔に刃を突きつけた。
「……っ」
もちろん、絶対かすめない距離だ。
ナイフは皮膚を割くことなく、ただ空気を切り、
銀髪の人の目の前で止まった。
痛みを予想して、ぐっと強く目をつぶった銀髪の人が、おそるおそるといったふうに目を開く。
「……あなたも傷つくの、怖いでしょ」
「は……?」
「人間は暴力なんて覚えなくていい生きものなんだよ。
傷つくのが怖くて目をつぶっちゃう人間のくせに、あなたに他人を傷つける資格なんかない」

