「葵衣、だめ!」
とっさに大声で葵衣を呼ぶと、すぐそばにいた柊木くんとみゆきがびくっと肩をゆらした。
あ……ご、ごめん。
でも、見過ごすわけにはいかなかった。
銀髪の人の胸倉を離さないまま、こちらを見た葵衣に、あたしは首を振った。
「お願い……。その人のこと、殴らないで」
「…………」
「葵衣には、暴力をふるうような人になってほしくないよ。
暴力なんてまったく強さじゃない。そんな行為で解決しないで」
意味のない暴力なんて、大嫌い。
まったくかっこよくないし、大切な人が傷つくなんて考えただけで悲しい。
だってその人を殴ったら、葵衣の手も傷ついてしまう。
葵衣はあたしの言葉に、自分を落ち着かせるように息を吐いてから、
銀髪の人から手を離してくれた。
ほっとしたけれど、銀髪の人は顔を引きつらせて皮肉げに笑った。
「はっ、なんだよ。二宮のくせに、女の命令なんか素直に聞くんだ?
ずいぶん弱い立場にまで陥落しちまったじゃねーか」

