銀髪の人が、ポケットからナイフを取り出す。
その口元が、引きつったようににやりとゆがんだ。
葵衣がナイフに気づいて目を見開いた瞬間に、銀髪の人がナイフを振り下ろす。
それを見て、一瞬で心が恐怖一色に支配された。
「だめ……っ!」
まにあって!!
心の中でそう叫んで、スローモーションに見える中、あたしは両手をのばす。
その鋭い刃が、葵衣の腕に触れる前に。
――あたしは両手で、思いきりナイフをつかんだ。
「紫乃……っ!?」
文字通り、てのひらに刃が刺さる激痛が走り、いっきに体がこわばる。
はあっ、とふるえる息を吐き出しながら、葵衣の声を聞いた。
あたしはそのまま銀髪の人からナイフをうばいとり、カランッと遠くへ投げ捨てた。

