いままで一度も見たことのない表情に、ぞくっと胃の底が冷える感覚がした。



なに……言ってるの?

葵衣はもう、不良なんてやめたんでしょ?



これからの事態を予測して、どくどくと心臓が強く脈打ちはじめる。




「へえ? ずいぶん余裕じゃねーか。自分の女がどうなっても……」


「うわっ!」




銀髪の人が笑って言いかけたとき、

今度は青メッシュの人が悲鳴を上げた。


ばっとそちらを見ると、なぜか気絶した赤い髪の人の上に倒れこんでいる。



そしてそのかたわらには軽く足を上げた、

金髪で長身の、みゆきの想い人が立っていた。




「ひっ、柊木くん……!」




みゆきがその名前を呼ぶと、柊木くんはこちらを見て、こまったようににこっとほほ笑んだ。


いつもと変わらない、おだやかな表情だ。




「ふたりとも、ほんと災難だね」