ビジネスおネエの長谷川君

わこちゃんの声に反応し、パッと後ろを振り返る。


「いらっしゃいま…………」


まさか と言うべきか。


やっぱり と言うべきなのか。


カフェの入り口に立っていたのは、


「藤浦……さん……」


誰にも聞こえない位、口の中で呟く名前。


屈託なく声をかけられないのは、やっぱり、彼女の″初めまして″が尾を引いているんだ、と気づく。


あぁもう、どんだけメンタル弱いんだ、俺。



結果、棒立ちで、店員として全く機能していない俺に向かって、藤浦さんは


「あ、1人、です」


と言いながら指を立てた。


その白くて細い指に目を奪われる。