「のんちゃん!」


まるで、『助かった』とでも言うように、のんちゃんに視線を移し、笑顔を見せる藤浦さん。


再び俺を見上げ、きゅっと結んだ口元が微笑んだかどうか……くらいの微妙さで軽く会釈をすると、ふわりと俺の横をすり抜けて行ってしまった。


……藤浦さんだ……。


その余韻に浸る間もなく、お冷やを急いで用意する。


そわそわしている自分に気づく。


落ち着け落ち着け、長谷川遥流。


深呼吸をひとつして、藤浦さんのいるテーブルに向かう。