そっちに行くよ、とは、言ったものの。


今更やっさんやらわこちゃんにどのツラ下げて会いに行くんだ、っていう……。



なーんて、まごまごしているうちに、遠くから走ってくる人影。


小さくて、ほそっこくて、凄く地味で。


だけど……


ほら、すっごい可愛く笑いながら手を振っている。


俺の好きな人。


「お待たせー!っていうか、殆どベンチ寄りじゃない!長谷川君、ズルしたね?!」


ズルした、って台詞、久々に聞いたな。


「足早いね、藤浦さん」


「長谷川君のが、二倍くらい足長いくせに……」

寒い空気を切って走ってきてくれたせいか、藤浦さんのほっぺは、まぁるく赤くなっていて。