「すげぇな、やっさん。うまく頑張れたら酒奢るわ」


「当然そのつもりッス」


やっさんが、くしゃっと笑う。


俺は、その笑顔に後押しされるように、店を飛び出した。



走れ。



走れ。



藤浦さん、アイツはやめとけ、俺にしないか?


いや、もう少し強く言いたい。


俺がお前を幸せにしてやる。


……いやいや、急にキャラ変更?


それならいっそ、嫁に来ないか?


……訴えられるな。



走りながら頭の中でぐるぐるぐるぐる、しっくりハマる言葉を探す。


10年以上もうんと前、もしも。


もしも、君の睫毛の花びらを取る勇気があったなら、何か変わっていたのかな?


走れ。


走れ。


走れ、俺。