ビジネスおネエの長谷川君

「ごめんねぇ、お待たせ!あら素敵なカップル。ご注文、ね?」


カップル、という単語をさりげなく入れて様子を見る。


今の俺の集中力なら、敏腕刑事も真っ青な程、僅かなコイツの心の動きが読み取れそうだ。


「えへへー。そんなことないですぅ。じゃあー、パスタのボンゴレとー、あ、ボンゴレだよねぇ?」


オオカミ男に媚びながら確認するブリブリ女。


視界の隅に微笑む雰囲気を察する。


にこ、じゃねーんだよ、バカ。


ワイルド気取りなら自分で言え、う○こ。



精一杯の営業スマイルでオオカミ男に一瞬顔を向け、手元のペン先に目線を落とす。


「あと、ベーグルサンドセットでお願いしまぁすぅ」