「でも、かっこよかったんじゃない?ワイルド系で…それなのに、優しそうで」


俺の必死で紡ぎ出した言葉に、藤浦さんが嬉しそうに反応する。


「そうなの!やっぱり、わかる?」


やっぱり、ってなんだよ。


1ミクロンもわっかんねーよ。


アイツのいいところも、平気で連れてくる藤浦さんの神経も。


……俺の心の叫びが藤浦さんに届くはずもなく。


「パッと見は、派手な感じだし、悪そうなんだけど、いざって時には優しくてね、暖かくてね、それで……「あ。ごめん」


藤浦さんの言葉を遮って立ち上がる。


「俺、この後約束あるんだった!ごめん、またね!」


何か言いかけていた藤浦さんは、口をつぐむしかなくて。


だけど、俺は、これ以上の無邪気なのろけに耐える自信がなくて。


ボディーバックをひっつかんで、その場から走り去った。


風が、冷たかった。