ビジネスおネエの長谷川君

「……すみません……」


割れたグラスの近くでしょんぼり佇んでいるわこちゃん。


「手が滑っちゃって……」


ざっと見て、床に散らばったグラスは2、3個ってとこか……


「手、大丈夫っスか?」


ぼんやりしている俺の脇を、ほうきとちりとりとビニール袋を持ったやっさんがすり抜けていく。


この中で一番年下のはずのやっさんが、状況判断が一番早く的確であるという事実。


手伝おう、と大きめのグラスの破片をつかもうとすると


「危ないんで、いいっス!」


空気で察したのかやっさんが、こっちも見ずに言う。


……やだ、かっこいい……的な。


結局、俺とわこちゃんが何もしないうちにホールは元通りになった。