土方「初任務だ」



私がそう土方に言われたのは5月も終わりに近づいた頃。



何でも炭薪商を経営している枡屋喜右衛門が深夜に武器やら弾薬やらを運んでいるところを目撃したという情報が入った為、真相を突き止めに行って欲しいとの事だった。




絵美「御意」




私は土方の部屋を退出すると廊下を走り抜けた。



絵美「初任務来たぁぁぁぁぁぁあ!!!!」




そんな私の歓喜の声が屯所中に響いたのは太陽が南の空で輝いている時だった。




…………………………………




沖田「絵美さん何かあったんですか?」




絵美「あ、総司!ふふふ♬聞きたい〜?」




原田「何だ絵美、良いことでもあったのか?」




絵美「そう!実はぁ〜♬」




私が彼等に任務の事を伝えると彼等は私と異なった反応を見せた。




絵美「え、何。温度差を感じるんだけど」




沖田「絵美さんには危険すぎますよ!」




原田「俺もそう思う。やめたほうが良い。今ならまだ断れるはずだ」



そう言って土方さんの部屋へ向かおうとする愚か者が二人。




絵美「ちょ、待ってよ!私の初仕事よ!?」



沖田「絵美さんにはもっと似合う仕事が他にありますから心配しないでください」



原田「俺らがちゃんと土方さんに別の仕事を貰ってきてやるから安心しろ」




絵美「冗談じゃない!!!」



全く安心しねえし!!



折角もらった大仕事だ。



きっとこれはあの有名な池田屋事件に繋がる仕事の筈。




絶対に土方さんに与えて貰った任務を遂行させるんだ。




絵美「総司、左之!私出来るから!ちゃんと出来るから!!お願い…この仕事をやらせて」




絵美がそう言うと沖田と原田は困ったかのように顔を歪めた。





絵美「ちゃんと出来るから」





もう一度強く言うと原田がため息を漏らし、私の目線になって合わせるようにして腰を屈めた。



原田「ちゃんと無事に帰って来ると約束出来るか?」




沖田「左之さん!!!」




原田「俺は今絵美に聞いてんだ!」




納得していない総司にかるく怒鳴るともう一度絵美に同じことを問いかけた。




そして私は強く頷くと凛とした声で言い放った。



絵美「胡桃沢 絵美は監察方として任務を遂行し無事に屯所へ帰還します!!」




原田「よく言った」




そう言って左之助は私の頭をクシャクシャに撫で回した。