日も沈み辺りが暗くなり始めた頃、新撰組屯所の前には仁王立ちしたとんでもなく恐ろしい鬼がいた。
裏から回りたいところだが既に鬼の視界に私の姿は捕らえられている。
仕方ない。
焼かれるか。
意を決して門に近づいた。
土方「今までどこに行ってた」
坂本龍馬の宿で語り合ってましたなんて言えるかっ。
絵美「河原で遊んでました」
土方「外出許可も得ずにか?」
絵美「はい、とっても楽しかったです」
ガコンッ
絵美「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
脳が……土方さん……脳が…
シェイクされてます。
土方「それは良かった。夕餉は抜きと言いてえところだが、俺が蕎麦を食いに行きてえ。付き合え」
絵美「お蕎麦!!!!お供させて頂きます!!!」
土方「さっさと来い!!」
絵美「総司とか一じゃなくて私で良かったんですか?」
土方「あ?あぁ、あいつらとはこれからも食いに行けるからな」
絵美「そっか……」
それからはお互い蕎麦屋まで無言だった。
「いらっしゃーい」
土方「天ぷら蕎麦一つ」
絵美「私も同じのを」
「はいよ」
土方「なぁ、近藤さんの事は許してやってくれねえか?あんなんでも反省してるんだ」
絵美「何言ってるんですか土方さん、もう許してますよ」
土方「本当か?」
絵美「はい!朝だって見たでしょう?普通に起こしに行くし普通に話してますよ」
土方「そうじゃなくて、本当に心の底から近藤さんを許しているのか?」
絵美「……………正直まだ分かりません。多分許せてはいるんだと思います。でも近藤さんから受けた傷はすぐには癒えていないみたいです」
土方「………そうか」
「天ぷら蕎麦二つお持ちしやした」
絵美「あ、私お金持ってない…」
土方「んなもんいらねえよ。俺の奢りだ。たらふく食え」
絵美「ありがとうございます!頂きます!!」
土方「お前美味そうに食うな」
絵美「だって美味しいもん!」
土方「そうか…」


