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大阪力士乱闘事件は力士と乱闘を起こすことなく終え、京へ戻った絵美達。



芹沢は早速稽古を付ける為、道場へ顔を出すと黄金色に輝く髪を高い位置で1つにくくり、素振りをする女の姿が目に入った。



ビュンッ ビュンッ ビュンッ ビュンッ




朝早い時間から誰もいない道場で竹刀を振るのは絵美。




剣の持ち方はおろか、握り方すら知らないと思っていた芹沢だが、既に素振りをする絵美を見て驚きを隠せなかった。




芹沢「お前、剣が使えるのか?」



絵美「あ、おはようございます!今日からよろしくお願いします!!」




芹沢「剣が使えるのか?」




絵美「使える…って程でもありませんが……」




芹沢「………………………よし、構えろ」




絵美「……………」




私は竹刀を握っている右手を頭の上に上げ、先に左手で触れた。




芹沢「…神道無念流か」





絵美「はい。芹沢さんと同じですよね?」




芹沢「あぁ。行くぞ!」




ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ




芹沢「守りばかりだと斬られるぞ!もっと打ち込め!!!!!」




絵美「でも、芹沢さんが強すぎて守ることで精一杯です!!!」




芹沢「略打(軽く打つこと)を許さず、したたかに真を打つ。お前は一撃、一撃が軽すぎる!!渾身の力を込めろ!!!!!」




絵美「まだ剣を再開して四半刻の女子にそんなこと出来るわけないじゃないですか!!!」




芹沢「ならば、ここまでだ!!!!」




絵美「まだまだです!!!」






ガンッッッッッッッッ








芹沢が竹刀を振り下ろすギリギリで受け止めた。




これには流石の芹沢さんも驚いたようだった。





絵美「…っぶない……!もう少しで殺られるところだった…」



芹沢「ふんっ、それが本性か?」




絵美「本性って…クスッ。別に隠してたつもりはないんですけどね」




芹沢「よし、まだ行けるな。来い!!!」





気づけば絵美と芹沢しかいなかった筈の道場は見物客で溢れかえっていた。





そして……





……………スパンッッッッッ。





絵美「い"ったぁぁぁぁい!!!!」





軽快な音と共に絵美の叫び声が壬生一帯に広がった。




芹沢「久しぶりに本気を出した。胡桃沢、」





絵美「……はい!」





芹沢「お前はまだ強くなれる。俺は少し出かけてくるからその間に素振り千本やっておけ。それが終わる頃には帰る」





絵美「分かりました。お気をつけて」




芹沢が道場から出るのを見ると緊張が解け、どっと疲れが襲った。




絵美「疲れたぁぁぁぁあ」




「おい」




床に座り込んでいると土方に声をかけられた。




絵美「土方さん、おはようございます」




土方「お前、朝餉の後に俺の部屋へ来い。話がある」




絵美「分かりました」