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絵美が目を覚ました翌日。




今日は山南と共に道場で稽古を眺めていた。




山南「絵美、あなたもこうして毎日稽古をしていたんですよ?」




絵美「私が?女子なのにみんなと同じ稽古を?」




山南「貴方は女子だから、と見縊られるのを嫌がっていましたからね」





絵美「そうなんですか…」






絵美が覚えているのは自身の名前だけで他は何もなかった。




だからなのか、髷や和装の者を見ても驚きはしなかった。





永倉「おっ、絵美じゃねえか!竹刀握ってみるか?」





絵美「えっ、でも私やり方がわからn…」





山南「良いですね。永倉君、絵美に持ち方から教えてみてくれますか?」




持ち方さえ教えれば後は感覚で出来ると思いますがね。




と、何故か自信気に言う山南。





永倉「いーか、まず竹刀の持ち方はこう!」




絵美「こう、ですか?」




永倉「そうそう。で、これが(ブォンッッ)素振り」



ビュンッ




絵美「合ってますか?」




永倉「おう!上手いじゃねえか!!そうだ、林ーーーー!お前絵美と試合してくれねえか?」




林「僕がですか?!絵美さんと試合なんかしたら殺されちゃいますよ!!!!」




絵美「なっ!私にあなたを殺せる力なんてありませんよ!!ていうか試合なんてまだ無理です!」



私ってそんな強かったのか。




目が覚めてからというもの驚くことばかりで頭では理解してても気持ちがついていかない。




私は何を忘れてしまったんだろう。





絵美と林の抵抗虚しく永倉による職権乱用にて私達は強制的に試合をさせられた。





永倉「いいか、一本取った方が勝ちだからな。始め!」





カンッ カンッ カンッ カンッ





永倉の合図と同時に攻めてくる林。




パシッ




パァァァンッ




絵美「は?」




永倉「絵美、一本!!」




カランッ




絵美「嘘嘘嘘嘘!!有り得ない有り得ない!!」





体が…勝手に動いただけで……





ズキンッ




絵美「う"ぅ…っ……」





『もっと打ち込め!!!!!』




『でも、芹沢さんが強すぎて守ることで精一杯です!!!』



『略打(軽く打つこと)を許さず、したたかに真を打つ。お前は一撃、一撃が軽すぎる!!渾身の力を込めろ!!!!!』




『まだ剣を初めて四半刻の女子にそんな難しいこと出来るわけないじゃないですか!!!』






これは誰…?




芹沢…?




ポロポロポロ




絵美「なん…で…悲しく…ないのに涙が…?」





私の意識はそこで絶たれた。