私は芹沢に連れられ、八木邸へやって来た。




「芹沢はん、おかえりやす。あら?そちらのかいらしいお嬢はんはどなたどすか?」




芹沢「梅、手当てしてやれ。怪我をしている。それから…こいつは今日からここで預かる」




梅「よろしゅおす」





芹沢さんはそれだけ言うと私と梅と呼ばれた女性を残してどこかへ行ってしまった。




って、今日からここで預かるってどーゆーこと!?




梅「ほなあ、手当てしまひょか。うちは梅。あんさんは?」




絵美「絵美…です……」





梅「絵美はんか…。かいらしい名前やね。もし良かったらうちとお連れになってくれやらんかしら?」




お連れって友達ってことだよね?




絵美「もちろん!お梅さん、私のことは絵美って呼んで!」




梅「えぇ。うち、お連れいなくて絵美がお連れになってくれて凄くうれしぃの」




絵美「私もここに来て初めて女の人の友達が出来て嬉しいです!」




梅「うれしいこと言ってくはるやん。それより、この傷どへんの?(この傷どうしたの?)」




芹沢さんに見られてるから嘘ついてもばれちゃうよね。





絵美「隊士の皆さんに……」





梅「嘘でっしゃろ!?酷い…。武士の風上かておけへんわね!」




そう言ってお梅さんは自分のことのように怒ってくれた。





絵美「そう言えば…芹沢さんは今日からここで預かるって…」





梅「きっと、絵美が隊士達に傷つけられとるのを見て放っておけへなんだのよ。あのしとは優しいから。きっと今は近藤はん達に伝えとるんやんかしら?」





絵美「そんな…っ…!私、女中の仕事もあるのに…」





梅「いいんやん?今まで耐えて来やはったんでっしゃろ?ちびっと一べべしよし(少し休憩しなさい)」





絵美「でも…」




もし…近藤さん達にバレたら隊士達はどうなるの?




まだ鉄則と呼ばれる局中法度が出来てないから切腹は免れるはずだけど…。




梅「あんさん、今隊士のこと考えとったでっしゃろ?絵美は麻呂(自分)のことよりも他人のことばっかり考える子なのね。もっと甘えてもいいんやん?」




絵美「…甘える……」





学校ではいじめられ、家に帰っても誰もいない絵美は甘えたことなんて当然ない。





絵美「でき…ない…。甘え方が…分からない…」






梅「あんさん、甘え方知らんの?ならうちが教えたる。だからたぁくさん、うちに甘えんさい」



絵美「お梅さん…、ありがとう」





梅「どへんいたしまして」




スパンッ




芹沢「上手く行っているようだな」




梅「芹沢はん、おおきに」




芹沢「ふんっ、何のことだ。絵美、お前は今日から俺の小姓だ。早速茶を淹れてこい」




絵美「あの…近藤さん達は…」





芹沢「安ずるな、許可は取っておる」





絵美「分かりました」




そう言うと絵美は炊事場へお茶を淹れに行った。



梅「ねぇ、芹沢はん。なんであの子を連れて来やはったの?」





芹沢「……髪色を見ただろう。アイツを傷つけてはいけない」





梅「随分とあの子を気に入ったようでっせー。ちびっと妬けまんねんよ」





芹沢「ふんっ。案ずるな。儂は童には興味ない」