引き止めてしまった。
彼女の白くて細い今にも折れてしまいそうな腕を。
部屋に戻ろうとした絵美の背中はとても儚く見えて少しでも目を離してしまったら消えてしまうのではないかと不安に駆られた。
当然彼女は元々大きかった目をこれでもかってくらい大きく見開いている。
何か言わないと。
原田「その…疲れてるみてえだから……よく寝ろよ?」
あぁ、何でもっと気の利いた言葉をかけてやれねえんだ。
悩んでる絵美を救うことの出来るもっと良い言葉が。
絵美「……ありがとう」
そう言った彼女の顔は今にも泣きそうだった。
なぁ絵美。
何がお前を苦しめてるんだ?
俺じゃ取り除けねえのか?
俺は頼りねえか?
俺はお前を助けられねえのか?
俺は…
俺は………
俺はお前のために何をしてやれる?
情けねえな。
惚れた女の悩みも取り除いてやれねえだなんてな。
俺は何でこんなにも頭が悪いんだ。
山南さん程の頭脳が欲しいだなんて高望みはしねえ。
せめて平助くらいの、人並みの頭脳が欲しかった。
神ってのは本当にいんのか?
いんなら俺は相当嫌われてるみてえだな。
そりゃそうか。
俺はたくさんの人を殺しちまってるもんな。
俺に幸せになる資格なんてねぇってか?
幸せになるのに資格なんているのか?
それは本人の希望だろう。
ちげえか?
俺は…俺はもう分かんねえよ……。