斉藤「お前はいつも掴めそうで掴めない。まるで総司の様だ。単純そうに見えて意外と慎重なところが正にな」




絵美「ふふふ。それは一も同じよ。いつも何を考えているのか分からない。霧のような人よね」




上品に笑う絵美は初めて会った時に比べ、仕草が幾分大人になったと斉藤は思う。





それと同時に斉藤は疑問が沸き起こる。




彼女が幕末に来て2年の月日が流れていた。




現在絵美は19歳。




しかし全く年を取っていないように見える。




それだけでなく彼女の美しい黄金色の髪も伸びれば黒髪になると言っていたが全くと言っていいほど髪は伸びていない。




やはり未来来たということが影響しているのか。



未来と決別したとは言っていたものの急に消えてしまうのではないかと不安に駆られることがしばしある。




彼女はきっとこの現象に気づいている。




然程気には止めていないのか。




それとも原因を知っているのか。




斉藤には分からなかった。



でも隣に彼女が存在して、笑みを浮かべている。




それだけで斉藤は安心感に包まれていた。




絵美「一、新撰組は必ず上にのし上がれる。それは私が保証するから安心してね。……例えこの身が滅びようとも私が彼等を守る」




最後の言葉は聞き取れなかったが斉藤は絵美の一言により絶対的な勝利が見えてきていた。




斉藤「お前が女としての幸せを得られるよう、俺たちも全力を尽くす」




そう言うと彼女は最初は驚いたのか目を見開いていたがその後すぐにふわりと柔らかく笑ってくれた。




俺も変わったものだ、と斉藤はつくづく思う。




今まで修行の身だと言って数々の女に断りを入れてきたが今は一人の女に惚れてしまっている。




彼女が笑えば自分も笑い、彼女が泣けば自分も悲しくなる。




でもこればかりは俺だけのようじゃないようだ。




土方や永倉、原田を除いた者はあまり女遊びに興味を示さない。




しかしそんな彼等までもが絵美に魅了されている。




彼女はこの時代にはない何かを持っているんだ。




誰もが惚れ惚れするような何かを。




どんな敵にも恐れずに立ち向かう勇敢なところなどこの時代の女には到底持てないもの。




そういうところなのだろうな。