山南「私…ですか…」




やっぱり、という反応を示した山南。




絵美「山南さん、あなたが歴史でどうなろうとしているか…頭のいいあなたなら分かるんじゃないですか?」




絵美は彼の口から答えが出ないことを望んだ。




しかし…







山南「………切腹…」









はっきりの聞こえた"切腹"。




山南の発言は幹部の頭を混乱させるのに簡単だった。



絵美「やっぱり、あなたはここを出て行くことを考えていたんですね」




山南「貴方には敵いませんね」




そう言った山南の顔はやはり疲れ切ったような顔をしていた。




沖田「山南さん、どういうことですか?」




土方「あぁ。説明してくれ」




私は山南さんの方を向くとまるで大丈夫、と言ったかのような顔をして頷かれた。




山南「もう疲れてしまったんですよ。刀を握れなくなった私は…もう新撰組に必要ありません。それに、今は伊東参謀もいます。彼は隊士達からの信頼も厚く頭も切れる。私の居場所はもう、どこにもないんですよ」




きっと試衛館から一緒だった彼等も山南さんの弱音を聞いたのは初めてだっただろう。




幹部達の驚きに満ちた顔からなんとなくそれは想像できた。




まぁ、山南さんはあまり自分の気持ちを表に出さないから考えなくても分かるはずだが…。





藤堂「な、何言ってんだよ山南さん!!!」




幼い頃に一人で家を出て山南のいる道場に入門した藤堂にとって、山南は唯一の親代わりだった。




そんな山南が生きることに疲れ、この世から去ろうとしているという事実は藤堂には重過ぎた。



瞳の中には今にも溢れんばかりに涙が溜まっていた。




藤堂「山南さんが…必要ないって、誰が言ったんだよ…。んなこと…誰も言ってないだろ…っ…」




原田「平助の言うとおりだぜ。俺は伊東なんかよりずっと山南さんの方が尊敬してるし、何よりも絆が固いと思ってる」




藤堂の頭を豪快に撫でながら言う原田。




その行動は藤堂の涙を隠そうとしているところが見受けられる。




土方「全くだ。それに総長にいなくなられたら俺や近藤さんの仕事量が莫大になるだろうが」




遠回しに山南を必要しているということを伝えるところからやはり土方は不器用だと誰もが思った。




永倉「山南さん、あんたは確かにもう刀を使うことが出来ない。でも山南さんにしか出来ないこともあるだろう。落ち着きのない近藤さんを宥めたり、暴走しやすい土方さんを宥めたり、全てを平和的に解決することが出来るのも山南さんだけだろう」




普段、原田、永倉、藤堂をまとめて3馬鹿と呼ぶ者は多いいが実際のところ仲間のこととなると自分のことのように苦しみ、更に気の利いた言葉をかけられる優しい3人だ。




だからみんながみんなを大切にしている、誰もが羨む仲間なんだ。