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あれから高杉は外出時はマスクをし、外出後は必ず手洗いうがいをしていた。
そしてご飯はここの女中さんに頼んでバランスのある食事を作ってもらっている。
今日、桂と高杉は会合で長州藩邸には私と吉田しかいなかった。
絵美「稔麿はさ、幕府のことはどう思ってるの?」
今まで統一するとは言っていたものの全く行動を起こしていなかった。
今日は煩い晋作もいないし、桂程じゃないが割と穏やかな稔麿が話しやすいんじゃないかと思ったのだ。
吉田「俺は幕府が憎くて堪んないさ。何たって俺の大切な師を殺したんだ」
稔麿や晋作は幼い頃に吉田松陰が開いた松下村塾に通っていた。
その松田松蔭は1859年に当時の大老、井伊直弼によって処刑されたのだ。
それを現代では安政の大獄と呼ばれていた。
絵美「でもそんな事言ったら長州側の人達も幕府側の人達をたくさん殺したよね?」
私がそう言うとムッとした表情になった稔麿。
吉田「じゃあ何?仲間が幕府の奴らに殺されても黙って指をくわえて待ってろって言うの?誰も殺すなって?」
絵美「別にそんなつもりで言ったわけじゃないよ。ただ幕府も長州も同じくらいの人達が殺されているって事。幕府にも稔麿と同じような恨みを持っている人もいるかもよ?」
吉田は私の話を聞きたくないのか仕事に集中し始めた。
絵美「あのね、稔麿。私が言いたいのはお互い憎み合い殺しあうのはもう終わりにしようって事。もう良いでしょう?どっちも好きなだけ人を殺してきたじゃない」
ガンッ
絵美「いった…」
私は稔麿により強く壁に叩きつけられた。
吉田「俺が…俺逹が…好きで人を斬ってきたと思うの?壬生狼と一緒にすんな!!」
ブチンッ
私の中で何かが切れる音がした。
絵美「稔麿達が好きで人を斬ってたわけじゃないのは最初からちゃんと分かってる!でもそう思われるようなことをしていたのはあなた達でしょう!!それに…新撰組のみんなだって好きで人を斬ってたわけじゃない!」
吉田「じゃあどうしろって言うんだ!俺は吉田先生を殺した幕府と仲間になるだなんて絶対に嫌だ!!!」
この時はお互い自我を失っていた。
絵美「稔麿、あなたは大人よ!子供は喧嘩をした時に相手のことをちゃんと許せるの。なのに何であなたは許すことができないの!?殺してきた人数はどちらも変わらないでしょう!!幕府にとって大切な人達も尊王攘夷の人たちに殺されてるわ!!!」


