不器用な彼と

勇気Side

翌朝。


「おっはーーーー☆ケンティーだおーー☆早く着替えて行くぞーーーー☆」


「まだ7時だし。…行くってどこに」


「約束したじゃん昨日」


…ああ。


フード付きの長袖パーカー。
普通のジーンズ。


久々に履くスニーカーと、久々に出る玄関。


一歩外に出れば、眩しい朝の日差し。

目がくらんでしゃがみこんだ。貧血だろうか。


「ちょ、ちょっと勇気!だいじょぶ?」


「…引きこもりにいきなり朝日、辛い」


「じゃ、俺の車で行こ。すぐまた戻るから、待っててよ」



健人くんの車は香水の匂いがした。健人くんの匂いと似てるけどちょっと何か混ざった匂いだ。

「…この匂い健人くんじゃない。窓開けていい?」


「ん、いいよ。…ほぼ俺の香水なのによく違いわかったね」


「健人くんみたいなのでも彼女いるわけ」


健「あいつの香りが残ってる。元カノ」


下手な相槌は打たなかった。
暗い健人くんをまだ見たことはない。
見たくもない。


何よりも、昔だったとしても女性の座っていた助手席に自分が座っていることに少しだけ嫌悪感を覚えて、俺は窓のそとを向いた。