不器用な彼と

勇気Side

部屋へ戻ると既に別室の岸はいなかった。


さっき大声を出してしまったけど、


亜紀がおとなしくて優しい子を集めてくれたおかげでそこまで部屋で無言の重圧に押しつぶされずに済んだ。
そこは亜紀に感謝だ。


岸の部屋。比較的うるさい奴ら、俺をいじめていた奴だってここにはいる。


大丈夫だ、教室にだって行けるんだから。


ドアを開けて、「岸、いい?」と廊下へ連れ出す。


冷房の効いた室内で一体何をしていたのか相手は汗だくだったが別に気にならない。


「佐藤、俺なんかした?さっき、ごめん…」


「そのこと、謝りたくて。もうフード卒業するよ、岸のおかげでなんか…うん、必要性の無さに気づいて」


「へへっ、よかった。ガリ勉の不登校なんてどんな奴かと思ったら良いやつで」


ガリ勉の不登校野郎か(いや野郎とは言われてないけど)。…うん、心にグサリとくるものがある。


「…あ、俺の部屋でさっき佐藤の話題になったんだ。


去年いじめてた奴が謝りたいって。

嫉妬、だったって…。


自分のせいで佐藤がこうなっちゃったんだ、って言ってた」


「…そっか、ありがとう、岸」


おう、と笑って汗を撒き散らしながら岸は退散する。


2年になって初めて、


男子の友達ができた。