勇気Side

「なによ。俺が来てない間に学校まで行って、あの子と一緒に帰るとこまでいってんのかよ」


「そんなんじゃないってば」


「名前呼びのくせに」


「どうせ保健室にしか行かないもん」


「…お前はさぁ。どうしてそう怖がったままなわけ、これじゃタマも苦労するわ」


「タマ…?玉ちゃんのこと?」


「あぁ…高校時代の先輩で仲良いの。


とにかく、お前はあの子と自分とどっちが大事なんだよ。

ひとこと辞めろって言えばやめてもらえるかもしれない嫌がらせを怖がって学校に行けないなんて、負け犬だろ」

負け犬。亜紀にも言われた。


今まではそうしてまた拗ねるだけだった。


「ちょっと前の俺みたい。彼女に振られて女が信じられなくて。

だから勇気も前に進めよ。

この前、お前が俺の車の匂いを指摘してくれたことで、俺は何か吹っ切れたんだよ。

今度は俺がお前を前進させてやる番だ」


なんとなく、分かってきた。


健人くんが今まで俺に学校に行けって口うるさく言わなかったのは、いつか、俺がこうやって勇気を出せる日が来るのを待っていてくれたから。


玉ちゃんと友達だから色々知ってただけで、魔法使いなんかじゃない。
でも、健人くんはきっと俺を魔法の力で何とかしてくれたんだ。


明日は…勇気を出したい。



久々に窓を開け、星を眺める。

なんだか悲しくて勝手に流れていた涙も今日はもう流れないことに気づいていた。

一際輝く星。あれは、きっと、明日の俺だ。