不器用な彼と

勇気Side

桜の花びらが1枚、また1枚、夜の闇へ溶けてゆく。


…。

…。


会話が、ない。


前を歩く齋藤亜紀は俺にはペースが早すぎて、まぁついていけない程でもないけれど。


「おい、齋藤亜紀。危ないから早く歩くな」


「佐藤勇気みたいなひょろいのに守ってもらわなくても結構ですから」


「…(怒)」


また無言でしばし歩く。


ダメだ俺、


せっかくできた、女子で話せる奴なのに。


ぶっきらぼうな言い方しか出来ない。


気付けば手前にある俺の家の前で、

齋藤亜紀は黙って俺を見ていた。


「…あのさ、齋藤亜紀「…それ」え?」


「いつまでフルネなのよ。…私も、佐藤勇気のこと、フルネ呼びしてるけどっ」


夜。


齋藤亜紀の顔はコンタクトなしの裸眼ではよく見えやしない。



でも、ほんのり紅い頬。


俺がアクションを起こさなきゃいけない気がして、

気付けば口が勝手に動いている。


「佐藤齋藤似てるから。…亜紀、かな」


亜紀「わかった。…じゃ、今日は、ありがとう。…勇気」


「…亜紀…慣れないなこれ。…また、学校行くまで委員長がんばれ」


亜紀「なによそれ。…って、え?学校…クラス、来るってこと…」


バタン、家に入り亜紀の声を遮る。

そうじゃない、教室はまだ怖いけど、お前がいるならってことだよ!気付けバカ。


健人くんが、ニヤニヤしながら、俺を見ていた。