不器用な彼と

勇気Side



「なーにやってんの、齋藤さん?」

その声に齋藤というワードを見つけ、早足で玉ちゃんに追いつく。


玉ちゃんの視線の先には、山積みの資料の前に座りこっちを見ている齋藤亜紀がいた。

咄嗟にカーディガンのフードを被る。

なぜ保健室登校の俺が廊下なんかにいるかというと、遡ること5分前。





保健室に行くようになって2日目。


玉ちゃんは特に何も言わず、時には俺をかくまってくれたり時には雑談相手にしたりと、まぁ基本は俺にかまっている。


暇なんだろうか保健室ってのは。


「あっ!電話だぁ」


玉ちゃんが保健室の電話を取る。


「はーい。保健室ですよーん。いますけどぉ?はい、あー、面白そー」


いますけどぉ?って俺しかいないじゃん。
面白そーってなに。
100%なんか企まれてますよね?


スピーカーボタンを押したけど、相手はもう電話を切っていたようだ。


玉「勇気♬ちょっと職員室付き合ってよ!」


で、警戒しながら玉ちゃんの10歩うしろをつけていたら、玉ちゃんがある教室で立ち止まって…。





今に至る。


「あっ、佐藤勇気」


「…なんだよ」


「委員長ならこれ手伝ってよ。放課後くらい委員長業務してよ」


「あっ!俺職員室行かなきゃ~」


「…ちょ、玉ちゃん」


ふわふわと玉ちゃんが職員室と逆方面へ歩いていく。


追いかけるのもシャクだから、齋藤亜紀が座る机の向かいに座った。