不器用な彼と

勇気Side


最近は外へ出てなかった俺だけど、
健人くんと外に出たあの日以来、
なぜだか頻繁に外を眺めるようになっている。


とはいっても、自分の部屋の窓は開けない。


この前星を見ていたら隣の部屋の窓が珍しく開いて、あいつが出てきたから。


いまあいつと顔を合わせるのは気まずい。女子かよ俺。


「やーっぴーーー☆勇気1位おめでとん!委員長がんばれーん」


健人くんは入ってくるなりそう告げる。暗に学校へ行けということか。


健人くんも所詮そうなんだ、俺を学校へ行かせようって…まぁ、大人だもんね。


「…って言っても、どーせお前は学校へ行かぬ」


「まぁね」


「保健室、先生男なのに?」


…え?


今健人くんなんていった?


「なんでっ!?って顔してんね」


健人くんはケラケラ笑う。


そんな…なんで、わかるの。


俺は、女性が嫌いだなんて、玉森先生以外に言ってないよ…。


健人くんは分からない人だ。


どこまでも分からない人だ。


俺のことをどこまで把握してるのか、


もしかしたら健人くんには、


全てわかっているのかもしれない、


健人くんの澄んだ瞳の奥が深く深く思える。


まるで茶色い深海だ。健人くんの瞳という深海の底に潜ればきっと俺は潰れてしまう。


俺は、健人くんから、逃れられなくなりそうだ。