不器用な彼と

「なによそれっ!自意識過剰じゃん。

なんなの⁉︎自分は憧れられすぎてストーカー被害が多大なアイドルとでも言うつもり?

かわいそうな王子様?ふざけてんじゃないわよ、バカじゃないの?

今の佐藤勇気はただの負け犬。男子にいじめられて女子が怖くて学校から逃げた負け犬」


言い終わって息を切らす私を、佐藤勇気は黙って見つめている。


と、ベッドに腰を下ろした。


「自過剰だの負け犬だの。…お前、俺が見てきた女の中で一番口悪い」


悪かったわね。


プリントを叩きつけるように佐藤勇気の机に置き、部屋を出て行く。


自分の正直すぎる性格。


今は恨めしい、好きな人に嫌われてしまったのだから。


その時の私は知らなかった。


力任せに閉めたドアの向こうで、佐藤勇気が


「でも、あの女は嫌じゃないな」


なんて考えていたのを。