不器用な彼と

亜紀Side


佐藤勇気がゆっくりと学校の方へ歩き出した、その後をばれない程度につける。











さっきから思うんだけど、佐藤勇気はだいぶ歩くペースが遅い。


そういえば、クラスも下駄箱の場所もわかんないだろうな…教えるべきか…


学校へ着くと、なんだか人が増えて騒がしい。


亜紀亜紀、そう呼ばれて振り返るとクラスの女の子がいた。結城ちゃんだ。


「ねぇ、亜紀!あの人、王子様!不登校になってた、佐藤勇気くん」


王子様?…ああ、あの噂か。本当だったとはね。


女子の明らかな視線を知ってか知らずか、佐藤勇気は2年の下駄箱ではなく職員室へ歩いていく。


と、保健室へ入った。


ほけとー(保健室登校)かぁ…。


人が苦手なのかもしんないけど、少なからず保健室へ行ったのを見てた子がいるからテスト後の保健室は賑わいそうだなぁ…。


ドクン。


また、胸が痛い。

また、嫌じゃない痛みが私を襲う。


心の何処かで、隣の家に住んでる私が一番佐藤勇気に近いもん、と本当の私が叫んでいる。


テスト前なのに…変な感情は、捨てないと。