「愛音くん、好きです」
愛音くんが。
でも、言えなかった。
「愛音くんの歌」
何度も付け足してしまった、その言葉。
その度に、愛音くんは表情を沈めてしまう。
「詩鳥は歌下手だもんね」
「うん、だから、愛音くんに歌ってもらえて嬉しい」
「....何時までも、僕が歌えるとは限らないでしょ」
拗ねてしまった横顔も、好き。
「うん、そうだよね」
「詩鳥も歌えるようにならないと、曲が可愛そう」
「うん.....」
沈黙、私は何も言えなくて、俯いた。
「 詩鳥は呼吸の仕方おかしいから、歌が下手なんだよ」
頭に手が乗せられて、くしゃくしゃと撫でられる。
「______」
あの時、何度も何度も繰り返された会話。
私は最後まで、愛音くんに思いを伝えられなかった。