「でも、物静かだけど、始めよりは話すようになったよね??」
「分かる!始めはもっと人避けてる感じだったけど、
今はなんか、慣れてきたって感じ?」
「可愛い〜、母性感じるわ。」
こんな噂されてるの聞いたら、どんな顔するだろう。
考えると、ちょっと笑ってしまう。
「と、噂をすれば…やはり、女子の呼び出し!」
「ええ!どこ!」
「絢香、反応早!」
指差す方を見ると、「あ…」
階段の踊り場にいるのは、ゆうちゃんと美優だ。
体育終わりのゆうちゃんの、汗が滴るほっぺ。
それだけで興奮して、立ちくらみしそうなくらい
である。
(変態)
「だめだ、立ちくらみしそう。尊い。」
隣でマコがそう言ったので、自分だけじゃなかった、と安堵する。
「ね、先行っといて〜、私忘れ物したし取りに行く!」
私は思わずそう言って、趣味の悪いことに踊り場の2人を覗き見をすることにした。
相変わらず、ツヤツヤしたボブに、可愛くきこなした制服、アイドルのように可愛い美優。
一方で、シャツのボタンを大きく広げているから、鎖骨が見えているゆうちゃんは、
何か一生懸命話す美優の話を横目に、袖をまくっている。
どうせ美優が、どうでもいい話でもしてるんだろう…
そう自分に言い聞かせて、その場を離れようとすると、
今まで無関心だったゆうちゃんの顔が、
みるみる驚きの色を帯びて、
最後には笑顔になった。
ひさびさに見たゆうちゃんの笑顔が、ものすごく可愛くて爽やかで、愛おしいのに
美優に向けられているということに、なぜか鼓動が速くなった。
「みーちゃん!?」
ゆうちゃんが、少し大きな声でそう言ったので、よく聞き取れた。

