それからゆうちゃんは、静かに私から後ずさりして、
狭い部室内で対角線上になるまで離れた。
え、え、え、わかんない。
何この状況。
すー…はー…
ゆうちゃんは、両手で口元を覆って、深刻な顔をしながら深呼吸をしている。
待ってよ、離れたくないのに
せっかく、近づいてきてくれたのに!
私は、「仮装用」のダンボールからあるものを取り出して、ゆうちゃんに近づく。
あるものとは…そう、
例の猫耳カチューシャである。
黒猫のカチューシャをつけたゆうちゃんを、人生で一度でも拝めるならもう何もいらない。
「ゆうちゃ…」
「嫌だよ?」
ま、まだ何も言ってない!!!
私は、端っこの机に腰掛けるゆうちゃんにじりじりと詰め寄る。
「無理、やめて」
嫌がるゆうちゃんも…可愛い!
私が背伸びして、もうすこしでゆうちゃんの頭に装着できる、と思ったとき……

