「別に…一橋がしたいなら、してもらって良いですけど。」
隣から声がした。
「えっ、戸谷君…!!」
「何。」
「良いのに…無理しなくても…」
「…あんだけやって欲しそうに言った後に言われても……」
「う…」
言葉に詰まる。
言い返せない、というより、久しぶりに話した事に対して動揺しているのかもしれない。
「…いいの?」
「余裕。」
『余裕。』
合格通知が来た日、そう言って親指を立てた戸谷皐が脳裏に浮かぶ。
「ありがと…」
「別に。」
あたしたちの交渉が終わると、先生は微笑みながら予定表を渡してくれた。
夏休み。
殆ど毎日戸谷君に会える。
そしてさっきの戸谷君の言動に
あたしは嬉しさでいっぱいだった。

