「塾休めないの?厳しい?」
「いや、そんなんじゃなくて…休みたくないの。」
戸谷君と会える貴重な日だから。
こんなに好きなのに、会える日に会わないなんて、罰が当たる。
「希咲マジメ~」
「違う!!」
当然思っていることを言う事は出来ないので、どんどんマジメなイメージが植え付けられていく。
まぁ…仕方無いか。
戸谷君とは…塾でしか会えないのだから。
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「希咲ちゃん、夏休みは何か予定入ってる?」
テストが終わったということもあり、先生が授業の合間に夏休みの話を持ち込む。
「いえ、まだ友達と遊ぶことしか…」
「じゃあ皐君は?」
先生が話を戸谷君にふると、戸谷君はゆっくり顔を上げ、少し首を傾げた。
「野球部の合宿と…試合がぼちぼち……」
「…あらあら、大変ねぇ。じゃぁ夏期講習は無理かしら。」
…夏期講習?
「へっ…」
「やろうと思ってたけど、皐君忙しいでしょう?冬期講習は、中学生からは一人でも実施するけど…夏休みは長いからねぇ…」
…え………
夏期講習があったら、毎日戸谷君に会えるってこと……?
なのにしないの……?
「え…先生、予定無い日もしないんですか?」
夏期講習をして欲しいと言わん許りにあたしは先生に聞いた。
「だって忙しいでしょう?今の週2回だけでも大変じゃない?」
…戸谷君は何も言わない。
あたしは何も言い返せなかった。
いくらあたしが「やりたい」と言っても
戸谷君がやりたくなければ
意味が無いから……。
無理はして欲しくないし…ね。

