「塾休めないの?厳しい?」
「いや、そんなんじゃなくて…休みたくないの。」
戸谷君と会える貴重な日だから。
こんなに好きなのに、会える日に会わないなんて、罰が当たる。

「希咲マジメ~」
「違う!!」

当然思っていることを言う事は出来ないので、どんどんマジメなイメージが植え付けられていく。


まぁ…仕方無いか。




戸谷君とは…塾でしか会えないのだから。




**********



「希咲ちゃん、夏休みは何か予定入ってる?」
テストが終わったということもあり、先生が授業の合間に夏休みの話を持ち込む。
「いえ、まだ友達と遊ぶことしか…」
「じゃあ皐君は?」
先生が話を戸谷君にふると、戸谷君はゆっくり顔を上げ、少し首を傾げた。
「野球部の合宿と…試合がぼちぼち……」
「…あらあら、大変ねぇ。じゃぁ夏期講習は無理かしら。」


…夏期講習?


「へっ…」
「やろうと思ってたけど、皐君忙しいでしょう?冬期講習は、中学生からは一人でも実施するけど…夏休みは長いからねぇ…」


…え………



夏期講習があったら、毎日戸谷君に会えるってこと……?




なのにしないの……?





「え…先生、予定無い日もしないんですか?」
夏期講習をして欲しいと言わん許りにあたしは先生に聞いた。
「だって忙しいでしょう?今の週2回だけでも大変じゃない?」


…戸谷君は何も言わない。

あたしは何も言い返せなかった。

いくらあたしが「やりたい」と言っても



戸谷君がやりたくなければ





意味が無いから……。



無理はして欲しくないし…ね。