「……はは…」
「え、え、何で笑う?」
戸谷君は口元を手で覆いながら、笑いをこらえている。
特に笑わせる気も無かったあたしにとっては、何で戸谷君達が笑っているのかよく理解出来なかった。


でも、久しぶりの戸谷君の笑顔…

心が舞い上がる。


やっぱり笑っていて欲しい。

ずっと…ずっと…。


自分の気持ちに振り向いてくれることが無くても…


戸谷君に悲しい顔はして欲しくない。







*********


「今日のアレは…話せたって言うのかな……」

塾の帰り道、静か過ぎる道で少し声を出してみる。
テストが近いせいもあってか、今日の授業は雑談が殆ど無かった。授業が終わった後も、戸谷君は早々と帰っていった。そして話す機会も無かったまま、今に至る。


「遠回しに…話せたのかな…。」

静かな道に、自分の声だけがよく響く。
まるで自分で自分に言い聞かせる様な。


あたしはわざと大きな音をたてながら立ち止まった。

「まだまだ…っ!!」

さっきより大きな声で、自分に言い聞かせた。


戸谷君が好き。誰よりも好きな自信だってある。

でもそれはきっと、皆が思っていること。

だから次は…それなりの行動をする。

好きだから、頑張る。努力する。