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緑公園までの道のりは、長かった。
駅で集合した、あたしと郁那と南。
3人ともだいぶ遠くから通学している。
なので、羽坂地域の事は、全くと言って良いほど知らない。
地図があっても。
前方を歩く人達について行っても、何故か皆バラバラのコースに進むので、どの道が合っているのかが分からない。
つまり、迷っていた。
「ここどこ?」
郁那が地図中の道をなぞりながらあたしに聞くが、到底分からない。
その時。
「あ。」
南が急に声を発し、あたしと郁那の視線は地図から南に向けられた。
「…どうしたのよ。」
郁那が地図が描かれたプリントで南の頭を叩く。
「頼れる子見っけー!!」
そう言うと南は一目散に前方に向かって駆け出し、驚くべき事に前方に歩いていた少女に体当たりした。
あたしと郁那は突然の出来事に唖然とし、正気に戻ると南の所に駆け寄った。
「南!!何してんの!!」
南の足下で倒れ込んでいる体当たりされた少女は、一緒に歩いていたもう一人の少女に身体を起こすのを手伝ってもらっている。
郁那は再び南の頭を叩いた。
「いったい!!」
「ばっか、何してんの!!」
「友達だもん!!」
体当たりされた少女は呻き声をあげながら、ゆっくりと顔を上げた。
………この子……………
パシーンッ!!
あたしの動きが静止した瞬間、少女の手が南の頬を打った。
あたしと郁那は、また突然の出来事に唖然とするしかなかった。
「何すんのよ、南!!」
そう叫ぶと、彼女は勢いよく立ち上がった。
びっくりして腰が抜ける。
「ゴメンって~、道に迷っちゃって。この二人も違う地域から通学してるからさぁ~。」
南は笑いながらあたしと郁那を指差した。失礼な奴だ。
一方その少女は、ようやくあたしたちの存在に気付いたようだ。
「…南の友達?」
二人は頷く。すると彼女は笑顔でこう言った。
「松井苗です。よろしくね。」
そう。少女は
合宿の時気になっていた、あの松井苗だった。

